分子の折りたたみが導く多様なメゾスコピック有機素材
?立体的に複雑な分子の自己組織化によるチューブ構造構築を実現?
2026年04月20日
研究?産学連携
365bet体育在线_365bet体育平台-【中国科学院】@国際高等研究基幹の矢貝史樹 教授、大阪大学大学院基礎工学研究科の五月女光 助教、東京科学大学物質理工学院のMartin Vacha 教授、北里大学の渡辺豪 教授、Keele大学のMartin J. Hollamby 講師を中心とする青山学院大学、物質?材料研究機構(NIMS)の研究チームは、タンパク質が生体内で行っている「折りたたみ」を介した自己集合過程をヒントに、有機分子を使って「折りたたみ」を介した自己集合を起こす仕組みを調査しました。その結果、2立体的に複雑な構造を持つ発光性分子が、自発的な折りたたみによって適切なメゾスコピック形態注1)へと変化し、最終的には中が空洞のチューブ構造へと組織化することを発見しました。さらにその詳細な構造や機能を探索したところ、このチューブでは励起エネルギー注2)が軸方向だけでなく周囲方向にも高速で移動することが確認され、励起エネルギーを効率よく運ぶ新しい材料設計指針が示されました。
本研究成果は、米国化学会が発行するJournal of the American Chemical Societyに2026年4月2日(日本時間)に掲載されました。
(論文はこちら:10.1021/jacs.6c00854)
■研究成果のポイント(詳細は別添参照)
1. π電子注3)系部位の大きさに依存した自己組織化構造の変化を発見
ベンゼン、ナフタレン、アントラセンの3種類のπ電子系部位を持つ折りたたみ可能な複数の分子を合成したところ、それぞれの折りたたみ方はπ電子系部位の拡張に伴って変化し、それに対応して自己組織化構造も大きく変化しました(図2)。

2.折りたたまれた分子の集合様式とナノチューブ内部構造を解明
アントラセン分子からなるチューブの内部構造を詳しく解析しました。その結果、分子が折りたたまれた構造を保ったまま積み重なることで中が空洞のチューブ構造が形成されていることが分かりました。また、この集合様式についてはシミュレーションの結果、分子がレンガのように精緻に組み立てられた状態にあることが示唆されました。さらにナノチューブの濃厚溶液では、チューブが配列して数センチメートルに達する発光性繊維へと紡糸できることも確認されました。
3. 励起エネルギーのπ電子系分子間における移動の方向性を実証
向きをそろえた光をチューブ構造に照射した際に、その向きがどのように変化していくかを時空間的に精密に測定することで、励起エネルギー移動がチューブの長さ方向だけでなく、チューブの円周方向にも広がって移動することを実験的に明らかにしました。
■今後の展望
本研究は、分子が集まる時の相互作用する場所や向きを、分子の折りたたみによって制御することで、従来では構築が困難とされてきたメゾスコピックスケールでの湾曲した自己集合構造を設計する基本原理を明らかにすることができました。また今回得られたナノチューブは、内部でエネルギーが三次元的に移動する性質を示しました。このようなエネルギー輸送機能を持つ分子集合体は、人工光合成や高効率発光材料など、光エネルギーを利用した有機材料への応用が期待されます。
■用語解説
注1)メゾスコピック形態: ナノスケールとマクロスケールの中間領域(約10~1000 nm)において現れる構造形態であり、分子の自己集合によって創発される階層構造を指す。このスケールでは、構造の組織化を通じて新たな機能が発現する。
注2)励起エネルギー:原子、分子、または原子核が基底状態からより高いエネルギー状態に移行するために必要なエネルギー。このエネルギーは、光、熱、電場、磁場などの外部要因によって供給される。
注3)π電子:原子間の二重結合や共役系において、側方に重なり合う軌道に分布する電子を指す。これらの電子は分子内で非局在化し、有機材料の電子的?光学的特性の発現に重要な役割を果たす。